今月の臨床 婦人科がんの化学療法—われわれはこうしいる
卵巣腹膜偽粘液腫の化学療法
滝沢 憲
1
1三井記念病院産婦人科
pp.730-733
発行日 1997年7月10日
Published Date 1997/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902976
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腹膜偽粘液腫の疫学・発生病理・予後
腹膜偽粘液腫は,一般に,粘液産生細胞が腹腔内全体に播種し,多量のゼラチン様粘液物質が腹腔内全体を充満している状態と定義される.本症は比較的まれで,全開腹例10,000人に対して1人1),あるいは2人2)と言われ,全悪性卵巣腫瘍に占める割合は,本邦では1,756例中21例1.2%3)であり,自験例では211例中2例0.95%(1985〜1993年)に過ぎない.本症の発症率は,女性が男性の3倍多く,その発生原因は卵巣粘液性腺腫・腺癌,虫垂の粘液性腺腫・腺癌あるいは高分化型大腸癌に続発由来すると言われる(女性では卵巣:虫垂=2:1と言われる).
しかし,卵巣粘液性腺癌が術中に破綻したからといって本症が続発することはないようであるし,悪性度が高く破綻しやすい卵巣癌より,むしろきわめて分化度の高い,組織学的に“良性”の印象を与える卵巣腫瘍を併発していることが多い.そこで,本症の発生には卵巣漿液性腺腫(境界悪性)に腹膜播種性病変を伴う場合や,卵巣表在性漿液性乳頭状腺癌に播種性の腹膜表在性漿液性乳頭状癌を伴う場合と同様に,腹膜中皮における造腫瘍能が何らかの理由で亢進している状態が想定される4).
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