Current Research
ヒト胎児行動学
小柳 孝司
1
Takashi Koyanagi
1
1九州大学医学部附属病院周産母子センター
pp.643-655
発行日 1993年5月10日
Published Date 1993/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901315
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
地面に残された足跡から,それが如何なる動物のものであるかを推測できるように,動作の特徴から諸種の動物の中枢神経系機能の発現も窺い知ることができる53,54)。これはLorenzが唱える行動学の視点である。行動とは,このように中枢神経系の機能とその表現型である動作とを対にして捉えることを言う。
胎児の中枢神経系ははじめに脊髄が,追って下位脳幹が発達してくるように,解剖学的には尾側から頭側へ,機能的には低次から高次へと分化してゆく25,32,57)。解剖学的には2歳ないし3歳になるまで発達をつづけてゆくものの,ヒト胎児の脳機能は相応の水準に達して誕生を迎える19)。また,無脳症の胎児における動作の研究から,例え,脳欠落に伴って,巨視的に神経細胞数が減少している状態であっても,微視的には生理的な神経細胞の配列と構策が保持されていることが正常な動作の発現には不可欠である92)。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.