今月の臨床 排卵—誘発と抑制の実際
疾患の治療
19.多嚢胞卵巣症候群
吉田 信隆
1
,
平野 由紀夫
1
Nobutaka Yoshida
1
,
Ukio Hirano
1
1岡山大学医学部産婦人科
pp.1082-1083
発行日 1992年9月10日
Published Date 1992/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901005
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多嚢胞卵巣症候群の診断
多嚢胞卵巣症候群は最初SteinとLeventhalにより,無月経を伴った両側多嚢胞卵巣腫大・希発月経または無月経などの月経異常・不妊の3兆候を示した症例を集めて記載された1)。その後諸家の検討により,男性ホルモン過剰と多毛・卵巣の白膜の肥厚・LH/FSH比の上昇などが特徴とされるようになった2)。その中で一時LH/FSH比の上昇が多嚢胞卵巣症候群の決めてであるがごとく考えられるようになったが,最近,hLH・FSHを標準品とした測定法ではその特徴が現れにくい。さらに経腟超音波断層法により卵胞の数が一定数以上あれば多嚢胞卵巣の診断とする報告があるが,正常周期の卵巣でも10個以上の卵胞が認められている現状では,多嚢胞卵巣症候群の診断に境界線を引くことは困難である3)。
卵巣の白膜の肥厚が多嚢胞性卵巣の原因か結果かはいまだに不明のままである。一方,多嚢胞卵巣が男性ホルモン高値となる原因としては,卵巣間質細胞より形成される内莢膜細胞と同等の機能を持つ細胞の増殖,あるいは排卵しないことにより内莢膜細胞が遺残するため,顆粒膜細胞へ供給すべき女性ホルモンの前駆物質としての男性ホルモンの過剰産生が起こってしまうためと考えられる。
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