今月の臨床 胎児治療—どこまで可能か
胎児治療とは
2.周産期医療との関わり
小川 雄之亮
1
Yunosuke Ogawa
1
1埼玉医科大学総合医療センター小児科
pp.266-268
発行日 1992年3月10日
Published Date 1992/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900764
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異常のある胎児に子宮内ですでに治療を始めるという発想は決して新しいことではない。酸素を含めいわゆる薬物を投与して胎児の治療を行うことはきわめて古い歴史を持っているし,グルココルチコイドの母体投与により胎児肺の成熟促進を計り,出生後の呼吸窮迫症候群を予防する試みもすでに1972年に報告されている1)。また侵襲的な外科的操作の例を挙げれば,胎児赤芽球症における胎児腹腔への経母体腹壁輸前血はすでに1963年から行われている2)。
一方,近年の超音波検査機器の発達により,これまで画像化が困難であった胎児の状態を実時問に,且つきわめて鮮明に描出できるようになり,胎児へのアプローチが比較的安全に行えるようになって,診断,治療,そしてその効果判定がかなり正確にされるようになった。1982年になると超音波ガイド下でBirnholzらの水頭症胎児の脳室穿刺3),Clewellらの脳室—羊水腔シャント造成4),Goibusらの閉塞性尿路疾患胎児への膀胱—羊水腔シャント造成5),更に子宮切開によるHarrisonらの膀胱—羊水腔シャント造成6),1990年には横隔膜ヘルニア修復術7),と外科的治療法が次々と行われるようになってきた。児の出生を待たずに治療効果を比較的正確に判定でき,生後の新生児医療につなげるようになったことは,種々の問題を提起しながらも,胎児治療が周産期医療の一重要分野として注目されてきたとも,言える。
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