今月の臨床 妊娠と免疫
不妊・不育症と免疫異常
19.抗リン脂質抗体と習慣流産
青木 耕治
1
Koji Aoki
1
1名古屋市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.193-196
発行日 1992年2月10日
Published Date 1992/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900744
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抗リン脂質抗体(APA)とは
抗リン脂質抗体(anti-phospholipid antibody:以下APAと略す)とは,主要な細胞膜構成成分であるリン脂質二重層に対する自己抗体のことである。APAは,人工的な細胞膜モデルとしてのリポゾームを用いた実験結果より,健常人の血清中にも微量ながら存在する自然抗体の一つであるらしい。このAPAが何んらかの理由で異常産生されている状態を,APA陽性と判定する。APA陽性患者においては,①習慣流産,②再発する動静脈血栓症,③中枢神経症状④血小板減少症などといった共通な臨床的特徴が報告されており,近年これらを一括して「抗リン脂質抗体症候群」という疾患概念でとらえることが,提唱されている。
ループスアンチコアグラント,抗カルジオリピン(CL)抗体,および梅毒血清反応の生物学的偽陽性を示す抗体(BFP-STS)などはAPAのひとつであり,SLEなどの自己免疫疾患や潜在的自己免疫異常の患者未梢血中によく検出されることが知られている。APA陽性婦人と習慣流産との密接な関係は,1980年代中頃より,多くの報告により認められている。
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