今月の臨床 妊娠と免疫
病態にかかわる免疫異常
1.流産・不育と免疫異常 2)抗リン脂質抗体
杉 俊隆
1
,
牧野 恒久
1
1東海大学医学部専門診療学系産婦人科
pp.1043-1045
発行日 2003年8月10日
Published Date 2003/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100855
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抗リン脂質抗体とは
抗リン脂質抗体とは,カルジオリピン(CL),フォスファチジルセリン(PS)など電気的陰性のリン脂質や,フォスファチジルエタノールアミン(PE),フォスファチジルコリン(PC)など電気的中性のリン脂質に対する抗体である.
1906年にワッセルマン反応が梅毒血清反応として開発された.その後,ワッセルマン反応の抗原としてウシの心臓のアルコールエキスが最適であることがわかり,その後1941年に心臓のアルコールエキスに含まれるワッセルマン反応の抗原として新しいリン脂質が発見され,CLと命名された.今から思えば,ワッセルマン反応は,梅毒患者に抗CL抗体が陽性になることを利用した検査法であったわけであり,抗CL抗体陽性のSLE患者の場合は梅毒血清反応の生物学的偽陽性とされたわけである.このように,抗リン脂質抗体は歴史的にCLを抗原とする梅毒血清反応陽性として発見されたため,抗CL抗体が最も有名である.しかし,実際には細胞膜リン脂質の構成成分にCLは存在しない.Cardio(心臓の)―lipin(脂質)という名前のとおりCLは心臓に豊富に存在し,有核細胞ではミトコンドリアの内側にのみ存在する.細胞膜の構成成分としての陰性荷電リン脂質は,PSとフォスファチジルイノシトールであるが,比較的少ない.むしろ中性荷電リン脂質が主要な細胞膜の構成成分であり,PEやPC,スフィンゴミエリンがある.
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