増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第6集
免疫学的検査
自己免疫関連検査
抗リン脂質抗体
佐々木 毅
1
1東北大学医学部免疫・血液病制御学
pp.602-603
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906494
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異常値の出るメカニズムと臨床的意義
抗リン脂質抗体(anti-phospholipid antibody:APA)は,カルジオリピンなどのリン脂質に対する自己抗体として報告された.その後APAはアポリポ蛋白H(β2-glycoprotein I:β2-GPI)やプロトロンビンなどに対する自己抗体であり,このほかにもプロテインC,プロテインS,アネキシンVなどの抗リン脂質・蛋白質に対する自己抗体も含む多様な自己抗体であることが判明してきている.
臨床上では抗カルジオリピン抗体(抗CL抗体,抗β2-GPI-CL抗体)とループスアンチコアグラント(lupus anticoagulant:LAC,抗プロトロンビン抗体)に大別される.LACは,個々の凝固因子活性を抑制することなく,リン脂質依存性の凝固検査を阻害する免疫グロブリンとして見いだされ,抗プロトロンビン抗体の動態と相関することが指摘されている.いずれのAPAも血栓症,梗塞,習慣性流産の発現と関与することが多く,この場合には抗リン脂質抗体症候群(APS)と診断される.APAは,凝固因子あるいは血管内皮細胞,血小板にも結合し,局所での凝固線溶系異常をきたすことにより血栓症発現を惹起すると考えられている.
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