増刊号 輸血検査実践マニュアル
各論
輸血臨床
血液製剤の適応と適正使用
血液凝固因子
西野 正人
1
,
吉岡 章
2
1奈良県立三室病院小児科
2奈良県立医科大学小児科
pp.207-212
発行日 1997年6月15日
Published Date 1997/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543903140
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凝固因子異常症の疫学
凝固因子異常症は先天性の凝固因子欠乏症もしくは異常症が主体で,本邦における先天性凝固異常症は表1のごとく,すべての凝固因子で存在している.その頻度は第Ⅷ因子の先天性欠乏・異常症である血友病Aが圧倒的に多く,次いでフォンウィルブランド病(von Willebrand disease;vWD),血友病B(第Ⅸ因子欠乏・異常)の順である.福井1)によると,血友病AおよびBを合わせると約3,800人,vWDは735人の生存が確認されている.つまり血友病Aは男子人口10万人当たり5〜10人,血友病Bはその1/5,vWDは人口10万人当たり2〜3人と推定されている.そのほか,無フィブリノゲン血症37例,第Ⅴ因子欠乏血症36例,第ⅩⅢ因子欠乏症33例,第XI因子欠乏血症24例,第Ⅶ因子欠乏血症23例などで,血友病とvWDを除く他の先天性凝固因子異常症は全体の5.2%にすぎない.後天性の凝固異常症には,新生児メレナ,特発性乳児ビタミンK欠乏症,重症肝臓疾患などのビタミンK依存性凝固因子低下・異常症,播種性血管内凝固症(disseminated intravascular coagulation;DIC),さらに膠原病などの免疫異常による循環抗凝固物質の発症例などが存在する.
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