特集 Fetal behavior
中枢機能の成熟と胎児行動
上妻 志郎
1
,
岡井 崇
1
,
水野 正彦
1
Shiro Kozuma
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.35-38
発行日 1989年1月10日
Published Date 1989/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207926
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
中枢神経系はあらゆる生命現象を統合する機能を有することから,個々の器管系が本来の機能を発揮するにはそれぞれに対応する中枢神経機能の発達が必要である。行動に関してももちろん例外ではなく,肉眼的に観察しうる運動のほとんどすべてが中枢神経系の統御を受けている。特に胎児期は母体・胎盤により栄養補給や排泄が行われ,子宮内という閉ざされた環境の中で外的な刺激も最小限に押さえられた状態であるため,胎児の行動は生命維持のためのものではなく出生後の行動に対する準備運動であり,中枢神経機能が各種要因から修飾を受けずに表現されたものであると考えられる。
大脳および小脳機能は出生後に著しく発達することが知られているが,新生児は出生時から既に独立して生存するための基本的な機能を獲得しているため,胎児期においても中枢神経機能は相当な発達を遂げていることが推察される。近年,超音波新層法の発達に伴い生理的な胎児の行動を観察できるようになり,呼吸様運動をはじめとする各種運動が妊娠経過と共に変化することが知られるようになった。この変化は胎児期における中枢神経機能の発達と密接に関連するものと推察される。本稿では当教室において超音波断層法を用いて観察した胎児行動について,中枢神経機能の発達という観点から概説する。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.