産科内分泌学入門・12
胎児の肺を成熟させるホルモン
安水 洸彦
1
,
加藤 順三
1
1山梨医科大学産婦人科
pp.243-247
発行日 1984年3月25日
Published Date 1984/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206419
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分娩が近づくにつれ,胎児は胎外生活への準備に忙しくなる。胎児の全器官は胎外生活に適応するのに十分な発育を完了しなければならない。さもないと,母体内の優雅な環境から一歩足を踏み出しただけで,幼い生命を失うことになる。
胎児の数ある器官のなかで最も劇的な変貌を要求されるのが肺である。肺の機能は,酸素,炭酸ガスなどのガス交換を行なうことで,肺の機能不全は死に直結する。胎児では,ガス交換が胎盤によって行なわれているので肺は休止状態にあり,気道と肺胞は液体(肺胞液)で満たされている。この肺が,胎児が外界に接した瞬間から機能を円滑かつ完全に発揮しなければならないわけだから,分娩直後の新生児の肺に対する要求は苛酷なんてものではない。それは,テスト走行もしていない試作車に,トラブルなしでアフリカ大陸横断を強いるようなものである。それだけに,分娩前の肺は「完壁な成熟」を要求される。
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