今月の臨床 産科外来検診マニュアル
妊娠後期
44.胎児の肺成熟
佐川 典正
1
Norimasa Sagawa
1
1京都大学医学部婦人科産科
pp.590-593
発行日 1993年5月10日
Published Date 1993/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901299
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出生後の胎外呼吸に適応するため,胎児肺は胎生後半期に形態学的にも機能的にも大きく変化する。形態学的には終末肺胞(terminal alveolarsaccules)の形成,円柱上皮のI型およびII型細胞への分化,間質組織における血管系の発達などがみられる。機能的には,肺胞壁のair-liquid inter—faceにおける表面張力を減少させ生理的な胸腔内陰圧でも肺胞が十分拡張し吸気を取り込むことを可能にさせる表面活性物質(surfactant)がII型細胞で合成分泌されるようになる。II型細胞から肺胞内に分泌されたsurfactantは胎児呼吸運動により羊水中に放出されるので,羊水中に存在するsurfactantを定量することにより,胎児肺の機能的成熟度をin situでしかも経時的に推定することができる。
ヒト胎児では,通常妊娠36週までに肺が機能的に成熟する。したがって,正常妊娠では胎児の肺成熟度が問題となることはない。しかし,妊娠中毒症や前期破水など合併症妊娠では,分娩時期を決定する上で胎児の肺成熟度が問題となる。本稿では,これまでに提唱されているsurfactantの測定法のうち,手技の簡便さおよび正確度から臨床的に有用と考えられるものを中心に述べたい。
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