特集 Fetal behavior
胎児循環とその制御
村上 雅義
1
,
千葉 喜英
1
Masayoshi Murakami
1
,
Yoshihide Chiba
1
1国立循環器病センター周産期治療科
pp.29-33
発行日 1989年1月10日
Published Date 1989/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207925
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循環とは必要な血液を各臓器の毛細血管に供給することである。それ故に神経性および液性の制御が存在し状況に応じて臓器への血流分配の調節が行われている。胎児においてもその制御が存在することは,解剖学的神経線維の証明や種々の状況下での循環系パラメータの変動をみた生理学的実験系での多くの報告から明らかである。しかしながら子宮内のヒト胎児において,その制御については未だ不明な点が多い。その理由には次の点が挙げられる。第1に成人では肺が全身血行に直列に配置するのに対して,胎児循環ではガス交換の場である胎盤が並列に位置するという,血行動態上の相違があり,成人のデータをそのまま当てはめることができない。第2に非侵襲的な検査が求められるが故に子宮内でのヒト胎児に対してデータ収集に制限を受ける。さらに発育,成熟過程という要素が制御の理解に複雑さを増しているためである。
一方,超音波ドプラー法により非侵襲的に血流動態の把握が可能となってきた。子宮内のヒト胎児において循環の制御の詳細な記述とはいかないまでも循環の変動を現象としてとらえた多くの報告がなされている。そこで本稿では,題目の循環の制御を種々の状況下での循環の対応と理解し,超音波ドプラー法でとらえられた血流変動の面から述べることにする。
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