特集 Fetal behavior
胎児行動とその臨床
佐藤 郁夫
1
Ikuo Sato
1
1自治医科大学産科婦人科学教室
pp.39-44
発行日 1989年1月10日
Published Date 1989/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207927
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胎児心拍数図・胎動図や超音波断層法により,子宮内での胎児の行動を直接あるいは間接的にキャッチすることが出来るようになってから10年以上経過してきている。その種類も呼吸様運動,嚥下運動,眼球運動などに始まり,頭部,躯幹,四肢の伸展・屈曲・回旋運動など極めて多い。
しかしながら現在われわれが得られるものは部分的な情報に限られ,胎児が一つの個体として,その行動がどこに位置づけられたものであるかといった総合的な判断はむずかしい。またわれわれは妊娠後半期になると,胎児の行動をinactiveとactiveのstageに分類することもできるが,行動評価上,inactiveとactiveのstageがいわゆる睡眠・覚醒という概念とどの程度かかわりあいを持ち得るかといった問いかけに対する解答が得られるにはなおかなりの時間を要すると思われる。さらに種々の行動の合目的性から考えた場合,例えば呼吸様運動や嚥下運動などの行動パターンが胎児と新生児が同一のものであっても,双方には本質的な相違点,すなわち胎児ではその行為が直接生命維持につながらないといった問題も存在する。したがって胎児behaviorを言及するに際して,新生児の行動論理から単純に胎児の行動を推測することは適切でないことを念頭において議論しなければならない。
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