今月の臨床 胎児疾患の管理─胎内治療の時代を迎えて
胎児治療─最近の動向
千葉 喜英
1
1国立循環器病センター周産期科
pp.1202-1205
発行日 2005年9月10日
Published Date 2005/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100385
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胎児治療の社会的認知
社会的認知や医療経済的認知なくして,新しい医療が定着・普及するはずがない.胎児輸血がLiley1)により発表されたのは1963年であり,わが国では1966年に金岡ら2)により発表された.以後40年の歳月が流れたにもかかわらず,わが国において,胎児輸血は社会的にも医療経済的に認知されていない.米国では年間500件程度行われている3).わが国では胎児輸血は未だに,医師の裁量のみによって実行される研究的,実験的医療である.しかしあまりにも歴史が古い技術なので,いまさら高度先進医療と呼ぶこともはばかれる.確かに,わが国の人口やRhD因子陰性率から考えると,RhD因子にかかわる胎児輸血の適応例は年間数例にすぎない.少なければ医療保障は容易に行えるはずであり,不規則抗体に起因する胎児貧血やパルボB─19による貧血など,ほかにも胎児輸血の適応はある(図1)4).
突破口が1つ開けた.医療機関を指定して,医療経済的に認知する高度先進医療に2種類の胎児治療が指定された.いずれも国立循環器病センターと筑波大学附属病院での承認である.1つは胎児尿路─羊水腔シャント術で平成16年12月より認められた.適応症は,Prune─Belly症候群などの胎児閉塞性尿路疾患である.2つ目は胎児胸腔─羊水腔シャントチューブ留置術で平成17年4月より認められた5).
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