指標
性機能の老化—卵巣の寿命を決するもの
一戸 喜兵衛
1
Kihyoe Ichinoe
1
1北海道大学医学部産婦人科教室
pp.349-359
発行日 1982年5月10日
Published Date 1982/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206612
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
多少の個人差はあろうが,閉経前の数年間は妊孕能がはなはだしく低下するとともに,月経周期についても無排卵周期が著しく多くなる。40歳代に入って45歳までは周期の約40%が,また46歳を過ぎると60%の周期が,少なくとも無排卵性になると目されているが1,2),排卵現象のみならず中高年齢婦人にあって,とくに40歳代に入って,ヒト卵巣には生後最大の変化がおこる。それは卵母細胞の突然の激減で,閉経までにほぼ卵巣から消滅してしまう現象である。
このヒト卵巣内の卵母細胞数を加齢上からみた研究で現在最も信頼されているのは,Block3)の報告で(表1),生後30歳代の末まではほぼ一定の傾斜で卵母細胞は漸減してくる。しかし40歳代に入ると急激な喪失が惹起する。筆者らの自験例からもこの事実はよく観察され,後述のように卵巣の原始卵数は,35歳以降では個人差もあるが減少が目立ちはじめ,40歳代に入ればこの傾向は加速されて個体差なく著明となり,40歳代後半では,検鏡下で組織標本上原始卵胞にであうことはむしろ珍しくなる。かくて閉経に至れば卵母細胞はもはや卵巣から消失する。したがって,ヒト卵巣では閉経と卵母細胞の消失はほぼ一致し,卵巣中の卵子の枯渇が卵巣寿命の終焉とみられている。
Copyright © 1982, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.