特集 卵巣
Ⅰホルモンとリプロダクション
婦人の老化と卵巣
広井 正彦
1
,
斉藤 憲康
1
Masahiko Hiroi
1
,
Noriyasu Saito
1
1山形大学医学部産科婦人科学教室
pp.41-46
発行日 1984年1月10日
Published Date 1984/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206923
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婦人の老化に伴う性機能の変化は最近注目されている分野である。とくにヒトでは他の哺乳動物にくらべて生殖能力の低下は早期よりおこり,妊娠率についていえば30歳代の後半から次第に低下してくるといわれている。この妊娠率の低下は無排卵性周期や黄体機能不全の増加,卵の異常などもっぱら卵巣機能低下に起因するものが多い。また視床下部—下垂体系より分泌されるgonado—tropinは老化によって分泌が低下するのではなく,むしろ亢進することを考えるとき,老化と卵巣機能の低下は密接な関係をもつことは明らかである。
ヒトの場合,ほぼ50歳前後に閉経という性機能にとって劇的な変化があり,これに伴って妊孕能を失うと共に,性器の萎縮や腫瘍性変化の増加,一般に更年期障害と呼ばれている身体的,精神的変化がもたらされる。閉経の発現機序については現在明らかではないが,卵巣における急激な卵胞の消費とそれに伴うステロイドホルモン分泌低下が直接の原因であろうといわれており,ここでは卵巣の老化に焦点を絞り,その2大機能である卵の育成とステロイドホルモン産生の面から自験例も含めて解説してみたい。
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