Modern Therapy 周産期薬物療法の問題点
母体の薬物代謝
荻田 幸雄
1
Sachio Ogita
1
1大阪市立大学医学部産科婦人科学
pp.893-896
発行日 1980年12月10日
Published Date 1980/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206350
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近年,合成化学技術の進歩は,数多くの新しい化学物質の出現を促し,産業面で著しい貢献を果たす一方,医学の分野においてもそれまで難治とされていた疾患に対する薬物療法として脚光を浴びている。このような化学物質の氾濫は,好むと好まざるにかかわらず,またそれと認識せぬ間にこれを摂取,あるいは接触する機会を増加させ,薬害,医原性疾患を惹起することとなった。とくに産科臨床においては,母体に投与されたある種の薬物が,子宮内で旺盛な発育を逐げる胎児に催奇形性を発揮することが明らかにされ,母体に対する薬物の投与に対して警告が発せられている。
元来,生物が嗜好する食餌は,生物固有の消化,代謝能により規制されている。ヒトにおいても,"自然食"を摂取することを前提として諸臓器の機能が設計されているため,これらまだ人類が経験したことのない化学組成をもつ物質を長期,大量に摂取することは必然的に臓器を損傷する可能性をはらみ,まして子宮内胎児の発育過程,生理機能にどのような影響を及ぼすかを予測することはきわめて困難である。
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