Modern Therapy 周産期薬物療法の問題点
新生児の薬物代謝—小児科医の立場より
吉岡 一
1
Hajime Yoshioka
1
1旭川医科大学小児科学教室
pp.897-900
発行日 1980年12月10日
Published Date 1980/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206352
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Ⅰ.薬物の胎盤通過
以前は,胎盤は胎児を守り,外界の影響を防ぐ防壁となると考えられていたが,サリドマイド奇形の発生を契機として,薬物は容易に胎盤を通過して胎児に障害をあたえる可能性のあることが明らかとなってきた。Schafferの新生児書によれば,胎児は妊娠から出産まで妊婦をつうじて11種の薬物の洗礼をうけるということである1)。とすると,薬物の胎盤通過について十分な知識をもっていることは,産科医または小児科医にとってぜひ必要なことである。
物質の胎盤通過機構にはいろいろあるが,薬物は分子量1,000以下のものは単純拡散によって通過していくとされている。拡散の原動力となるのはいうまでもなく膜をへだてた薬物の濃度差であるが,その速度を規制する因子は薬物の分子量,溶脂性,電解性(polarityすなわち分子の荷電),蛋白結合性の大小,などである。
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