疾患の病態と治療 リスクの高い病態の対策--産科から
新生児重症黄疸
荻田 幸雄
1
Sachio Ogita
1
1大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.257-260
発行日 1977年3月10日
Published Date 1977/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205589
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近代医学の発展は,数多くの疾患の病態,病因を明らかにするとともに,その疾患の治療法,あるいは予防法の開発を可能にしつつある。なかでも,新生児黄疸,とくに母児血液型不適合の際に発症する新生児溶血性黄疸に関する限り,その病因の解明,病態把握,重症度の予測法,治療法,あるいは予防法の進歩はめざましく,本症を惹起する可能性ある症例に対して,母体免疫抗体価の測定,羊水中ビリルビン様物質の測定,胎内交換輸血など積極的な管理,治療を行なうことが可能となっている。
しかしながら軽症の黄疸以外,なんら認むべき症状を呈さず,その黄疸も生後一週ほどで消退する,いわゆる新生児の「生理的黄疸」に関しては,溶血性黄疸に比して,その病因論的解析は不十分であり概念的な部分も少なくない。また,定義に関しても,「生理的」黄疸とこれに対応する「重症」黄疸との間には明確な区別はなく,あくまでre—trospectiveな臨床経過に対する診断名であるので,溶血性黄疸のごとく,児の黄疸が「生理的」範囲内で終わるのか,生理的範囲を越えて進行性に黄疸が増強し「重症」黄疸に移行するのかの予測は不可能であり,この点が実地臨床上極めて重要な問題点となっている。
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