薬の臨床
母体—胎盤—胎児系におけるXylitol代謝
石塚 直隆
1
,
太田 正博
1
,
鈴木 正英
1
,
広島 敏彦
1
,
熱田 明
1
,
蜷川 映己
1
Naotaka Ishizuka
1
1名古屋大学医学部産婦人科学教室
pp.1033-1038
発行日 1970年11月10日
Published Date 1970/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204309
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緒論
妊娠時,胎児は発育に必要なエネルギー源の大部分を糖質の形で母体より胎盤を通して供給されている。母体においても,prediabetic conditionとして臨床上認められるように,その糖代謝系は,非妊時に比して変動していることが推定される。しかし,糖の胎盤通過,母体—胎盤—胎児系における糖代謝およびその制御については,なお末解決の点が少なくない。
糖代謝には,glucoscやfructoseに代表される六炭糖を分解して,エネルギーを発生する解糖系のほかに,体成分の素材を提供し,同化を促進するpentose phos-phate pathwayやuronic acid cycleなどの非解糖系が最近注目されてきた。図1に示したごとく,uronicacid cycleの生体内の正常中間代謝物であるxylitolは,NADPを補酵素とするL-xylulose reductase によりL-xyluloseとなり,NADを補酵素とするD-xylultosereductaseによりD-xyluloseを経てpentose phosphatepathwayに入り,いずれも解糖系につながつている。このようにxylitolは,エネルギー源になるとともに,補酵素への水素供与体として,また体成分構成の素材として重要な働らきをするものと考えられる。
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