疾患の病態と治療 産婦人科疾患の免疫学的アプローチ
男子不妊—睾丸の自己免疫症
畠山 茂
1
,
岡安 勲
1
Shigeru Hatakeyama
1
,
Isao Okayasu
1
1東京医科歯科大学病理学教室
pp.277-281
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205400
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男性の妊孕性をきめるのは,精液中の精子であつて,正常な数と活発な運動性を有していることが必要である。精子は睾丸の精細管内できわめて系統的な分化過程を経て形成され,副睾丸内で十分に成熟したのちさらに精路系を下つて放出される。したがつてその過程のなかの一部分にでも障害が起こると,完成された妊孕性は得られないことになる。例えばそのための副睾丸などの機能なども重要であるが,生理的な働きはよくわかつていない。
睾丸の自己免疫症によつて,男子不妊がもたらされる場合を考えてみると,それには2つの方向がある。一つは抗精子抗体ができて,これはなんらかの機転でつくられた自己抗体であるが,副睾丸や精嚢などの分泌液中に排泄されて精子に直接働き,凝集したり不動化したりするものである。もう一つは,免疫反応の場が睾丸内にあつてそのために,精子自身ないしその形成過程が障害をうける場合であろう。これらの2つは,相互に密接に関連し合つているはずで,一つの自己免疫症過程の単なる2つの局面にすぎないと考えたいが,未だ証拠は不十分で明確でない。従来,抗精子抗体の検出が主としてgynecologistによつて試みられ,精子形成の変動と関連した自己抗体の研究がいまだ,urologistによつてはなされていないことによる。
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