疾患の病態と治療 産婦人科疾患の免疫学的アプローチ
精子免疫と女性不妊
香山 浩二
1
Koji Koyama
1
1兵庫医科大学産科婦人科教室
pp.283-287
発行日 1976年4月10日
Published Date 1976/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205402
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動物においては雌動物を精子または睾丸で免疫すると血中に抗精子抗体が産生されてくると同時に不妊症の起こつてくることが多数の研究者によつて証明されてきたが,人間においても,ずいぶん古くより性交頻度と妊孕性の関係が報告されており,婦人は頻回の性交により不妊傾向になるが,一定期間夫から隔離しているか,または禁欲を行なつていると,その後妊娠率が高くなるといわれてきた。文献的には実際に婦人に精液を注射して一定期間不妊を認めたという報告もあるが,いまだ人精子特異抗原が分離精製されていない時点での精子免疫の人間への応用であり,他の重要臓器との共通抗原の存在を考えた場合に非常に危険な試みであつたといわざるを得ない。
人間においては,精子免疫と不妊の関係を研究する場合に,まず不妊患者の中に実際に精子に対する抗体を保有している者がいるか否か,保有しているとすると,これらの抗体は精子に対してどのような作用を示すのか,またいかなる抗原に対してどのような抗体が産生されてくるのかなどの,いわゆる抗精子抗体保有患者の詳細な分析より始めるのが最も常道であり,どうしても人間においては動物実験におけるごとく長足の進歩は期待できない。
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