薬の臨床
妊婦尿路感染症に対するNeomysonの効果—殊に妊婦腰痛との関連について
宮崎 好信
1,2
,
黄 鴻騰
3
Yoshinobu Miyazaki
1,2
1熊本大学医学部産婦人科
2熊本市立産院
3熊本大学医学部産婦人科学教室
pp.485-489
発行日 1971年5月10日
Published Date 1971/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204413
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はじめに
妊婦は尿路感染症にかかり易いといわれているがKass1)が尿路感染症を合併する妊婦は早産や死産,妊娠中毒症を合併し易いと報告してから産科医はもちろん内科医の興味を惹くようになつた。殊にKass1)は無症候性細菌尿を中間尿を用いて2回以上培養して尿1mlに10,000以上の細菌を認めるが,特別な臨床症状を呈しないものと定義し,更に無症候性細菌尿を有する妊婦を2群に分け1群にはSulfonamide剤を他群にはPlaceboを投与したところ,投与群には1例も腎盂腎炎が発生しなかつたが,Placebo群には40%に腎盂腎炎が発症したと報告している。Kincaid-Smith2)は腎盂腎炎は妊婦の1ないし2%に発症し,殊に細菌尿を有する妊婦の1/3に発症するといつている。またWhalley3)も彼の綜説の中で細菌尿を有する妊婦で無処置の場合その23%に腎盂腎炎を発症しているのに対して,抗生剤などで治療した妊婦では2.6%に腎盂腎炎が発症したに過ぎないと報告し,上田5),田渕4)らも腎盂腎炎発症の予防として無症候性細菌尿の治療の重要性を強調している。以上のことから尿路感染症に特有な臨床症状を認めなくとも細菌尿を持つている妊婦は抗生剤などで治療をしておく必要があることが分るが,この他われわれの興味を惹いた点は今回の調査で尿路感染症を有する妊婦は腰痛を訴えることが多く,妊婦の腰痛をただ単に妊娠による力学的荷重の増加のためと簡単に処置すべきでないということが分つたことで,この点を中心にThiophenicol(Nec-myson)を使用して妊婦尿路感染症の臨床症状に及ぼす影響について検討を加えてみた。
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