Medical scope
妊婦・褥婦の尿路感染症
島田 信宏
1
1国際聖母病院産科
pp.63
発行日 1970年10月1日
Published Date 1970/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204005
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妊娠している女性や分娩後の褥婦に膀胱炎,腎盂炎などの尿路の細菌感染症が多いということはすでにょく知られている事実である。妊娠が39.0℃〜40.0℃といった高熱を発し,左右いずれかの腰部痛を訴えたり,分娩後2〜3貝して同様の症状があると,私達はもう話をきいただけで腎盂炎だと分ってしまう。では,どうしても妊婦や褥婦にこのように尿路の細菌感染症が多いのであろうか? この理由については現在までにいろいろと論じられている。こんな問題を今月は考えてみることにした。
妊婦に尿路感染症が多い第1の理由は,妊娠中には黄体ホルモンが分泌されているので,そのホルモンの作用によって尿管の運動が減少して,尿管は静かにじっとしていることが多くなるからであるとされている。つまり,尿管が動かないでじっとしていると,内の尿は先へ進まないで尿管内にうっ滞している時間が長くなり,腸管内にいる大腸菌群などが腸壁を通って尿管内の尿に感染して行くと考えられる。したがって,この点からみても,便秘も腸管内の内容が長くうっ滞している状態なので,よい影響は与えないことからうかがえる。
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