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婦人の尿路感染症は男子に比較してその罹患率が非常に高く,普通2倍から5ないし9倍の高率を示すという1,2)。産婦人科領域において,このように日常しばしば遭遇する尿路感染症は,いわゆる原発性のものの他に,妊娠・分娩・産褥・放射線療法・手術など3〜12)の際に見られる合併症としての本症にもその重要な意義を持つものである。婦人の尿路感染症における病原菌は,中村13)によれば,本症の約65%,特に子宮頸癌手術後の合併症としての本症では約79%が大腸菌によつて占められるという。これは女性泌尿器の持つ解剖生理的特徴の他に,手術における膀胱障害あるいは化学療法による球菌の抑制などがその主な因子として加わるためであろう。このような意味で婦人尿路感染症の治療には,抗大腸菌性の選択にその充分な考慮が必要である。しかも尿路感染症に対してその効果を高めるためには,吸収ならびに尿中への排泄が速やかで尿中回収率の優秀なこと,低いpHでも高い溶解度が保たれ,またacetyl化率の低いことが必要である。1953年DomagkによつてProntosilが発見されて以来,目覚しい進歩を示したSulfonamide剤の現況においてもなお,このような意味においてはいずれも不充分といわざるを得ない。その後,Von Kennel&Kimming14),Jensen&Possing15)らによつてsulfa-methylthaiadiazoleが紹介され,これが上記のような条件をかなり具備しており,欧米16,17)においても日本18,19,20,21)においても,尿路感染症の治療に広く使用されて,臨床効果に有効性を認められてきた。
その後,いろいろな抗生物質が出現し,その効果の優秀性が証明されており,ことにChloramphenicol (以下CPと略す)は耐性菌の漸増にもかかわらず,わが国では好用されており,最も多量に使用されている抗生剤である。しかしCPは生体内ですみやかにグルクロン酸抱合され不活性化されることがわかつているが,主として人尿中,不抱合の型で微生物学的に活性な型は5〜15%にすぎないといわれている。そこで近年CPのPara位のNO2基をCH3SO3基で置換されたThiamphenicolが合成され,これが腎からの排泄が高く,婦人尿路感染の治療に最適ではないかと考えられ,われわれはその臨床効果に有効性を認めることができたのでここに報告する。
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