特集 月経異常とその診断
黄体機能不全
飯塚 理八
1
,
己斐 秀豊
1
,
小林 俊文
1
,
仁科 進弘
1
Rihachi Iizuka
1
1慶応義塾大学産婦人科学教室
pp.123-129
発行日 1970年2月10日
Published Date 1970/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204161
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はじめに
黄体機能不全(luteal insufficiency)という言葉はかなり古くより,日常診療上私たちが口にしていながら,その明確な定義や診断のcriteriaの詳細についてはなお異論が多いまま,今日に至つている。近来,不妊診療上,着床阻害因子としてこれの重要性が再び検討されるようになつたことは,当然のことといえよう。しかも,最近の基礎分野における生殖生物学の急速な研究の進展を背景として,ヒト生殖機構に関しても,特に排卵をめぐる複雑な機序の解明が次々と果たされているのに比較して,着床のメカニズムのそれは,方法論的な困難さのためもあつて,いささか立遅れている感は否めない。
私たちでは不妊症の臨床面でかなり古くより(渡辺1),飯塚2)),機能性不妊の一病型としての黄体機能不全に注目し,妊卵の着床障害による不妊要因の成立の可能性とその臨床像の解析につとめ,今日まで重要なテーマの一つとして研究を続けている。特に最近では,黄体を中心とした卵巣よりのホルモン分泌動態の分析,旧来の形態学的手法から組織化学および電顕までを含めた子宮内膜の着床期をめぐる分泌性変化の追跡,卵巣,特に黄体のsteroidgenesisの研究など,黄体機能の生理と病態生理に関して種々の角度から究明の努力を行なつて,わずかずつではあるが,この分野における知見を拡大しつつあるところである。
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