産婦人科医療--明日への展開 診断基準--新しい局面
Ⅰ.婦人科篇
黄体機能不全
木下 勝之
1
,
高木 耕一郎
1
,
北川 浩明
1
,
堤 治
1
,
佐藤 和雄
1
,
坂元 正一
1
Katsuyuki Kinoshita
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.643-645
発行日 1983年9月10日
Published Date 1983/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206866
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黄体機能不全は不妊,不育の原因として重要な疾患の1つであるが,その疾病概念や診断基準はいまだ統一されていない。しかし,黄体で産生されるプロジェステロンが子宮筋の収縮を抑制すること,またエストロジェンの刺激を受けた子宮内膜に作用し,妊卵着床・維持に適した分泌期内膜へ分化させること,さらに胞胚の分割・分化に必須であること等の事実から,原因のいかんによらず,黄体の機能異常によるプロジェステロンの分泌低下が子宮内膜の形態および機能分化を障害し,さらに妊卵の正常な発育を阻害する結果,着床障害や妊娠初期流産を招来するものと考えられる。したがって,黄体機能不全に含まれる概念は視床下部—下垂体—卵巣系の内分泌機能異常の問題から,ホルモンの標的組織である子宮内膜,あるいは妊卵そのものの異常までも含む幅広いものであり,診断に当たっても,黄体の内分泌機能を指標とする立場や子宮内膜の形態変化を基準とする場合もあるのが現状である。病因とその結果がより明らかとなれば診断基準も統一されると思われるが,今だ研究段階であるので,今回は卵巣におけるプロジェステロン産生機構とその病態を概説し,日常臨床における黄体機能不全の診断につき,最近の知見も含めて述べる。
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