特集 性器出血とその診断
閉経後出血の診断
森 一郎
1
,
竹中 静広
1
,
許 定生
1
Ichiro Mori
1
1鹿児島大学医学部産婦人科学教室
pp.61-66
発行日 1970年1月10日
Published Date 1970/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409204151
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はじめに
閉経後に性器出血をみた場合は,従来は器質的疾患,特に悪性腫瘍を疑えといわれているように,その診断は比較的容易であつた。ところが最近では,婦人の性腺機能は環境に支配されやすいので,近頃の華やかな社会のためか閉経が判然とせず,したがつてどのような性器出血を閉経後出血といつてよいか判断に困つたり,あるいは閉経婦人は,高血圧症や不定愁訴に性ホルモンのはいつた保健薬を用いがちなので,そのため医原性の性器出血がおこつたり,また性の氾濫がひどいためか,閉経婦人で情動性のものとしか思えない性器出血をみたりすることが多いので,その診断には極めて慎重を期せねばならなくなつてきた。
そこでわれわれは,閉経後出血の診断にあたつて,閉経をどのように解釈するかをまずきめ,ついで性器出血前の生活環境について詳細にきき,そしてはじめて一般の診察法を行なうことにしている。すなわち閉経については,本人が閉経と思つてから,1年以上1,2),1〜2年以上5),2年以上3,4)などと諸説があるが,一般に1年以上をとるものが多いので,一応これによつて閉経したものと考え,また性器出血については,家族や情緒環境,常用薬品,他医への受診,夫婦関係,帯下,入浴や排尿便時の腟洗や外陰の清拭などについて詳しくきくことにしている。そしてこのあと,視診や内診のほか,コルポスコープ診,内分泌学的ならびに腫瘍学的細胞診,診査掻爬,組織診,微生物検査,子宮卵管造影法などを必要によつて行なつているが,以前の結果とくらべかなり興味ある成績をえている。
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