私の座右書
患者こそ貴重な座右書
村国 茂
1
1聖路加国際病院産婦人科
pp.228
発行日 1967年3月10日
Published Date 1967/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409203664
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私にも「私の座右書」について一筆をと依頼されたが,正直のところ我々のような診療専門で忙殺されて毎日を送つている者には,これといつて特定な座右書はあまりない。強いて告白すれば,書物と人間とを混同しては出題の趣旨に反するけれども,私自身にとつては毎日診療している妊産褥婦やいろいろな悩みや病苦を訴えて受診を求めて来院し,また入院している婦人科患者こそ,最も貴重な座右書とも考えられる存在であつて,毎日その時その時に応じて虚心に,白紙になつてこれらに立ち向つていると,容易に書物なぞからは得られない新らしい観察や工夫や判断が得られていくように思う。多忙で患者数の夥しいことなぞ少しも苦にならない。もちろん,先人の歩んで来た苦難の跡を回顧し,新知識をできるだけ吸収する意味で,暇を盗んで眼を通すことのある書物や雑誌はあるが,不勉強のため,自分の専門領域に限つてさえ,内外の有名な書物を全部眼を通したことはないので,ある特定なものだけ限つて他の人に推賞したり喧伝できないのは恥ずかしいが,できるだけ洋書ことに米国のものを繙くことにしている。辞書なしで読破するわけにもゆかないので,いつもDORLAND'SILLUSTRATED MEDICAL DICT—IONARYとSANSEIDO’S New Con—cise English-Japanese Dictionaryは机上に置いて,まめにこれらを引くことにしている。
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