症例研究
子宮腫瘤及び性器出血を主徴とする白血骨髓肉腫症
落合 時典
1
1東京醫科齒科大學醫學部産婦人科教室
pp.73-77
発行日 1950年2月10日
Published Date 1950/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409200318
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まえがき
元來白血病は内科方画に於ても一般に比較的稀れな疾病とされており,殊に吾が産婦人科領域に於て之に接する事は稀有なるものの一つである.試みにHalban-Seitzのソウ書をひもどいて見ても白血病に關しては,それと妊娠及び中絶又は胎兒白血病に關する記載が見當るのみである.私は偶々骨髓性細胞浸潤の著明な子宮腫瘍及び頑固な性器出血を主徴とする白血骨髓肉腫症の1例を經驗し,文献に徴すれば極めて興味深いものと考えられるので報告することにした.
緖方(知三郎)教授は白血病を含めた造血臟器の増殖を腫瘍として取扱い,これを系統立て18種の病型に區別しておられる.その分類に從えば白血骨髓肉腫症(Leukaemio-myelosarkoinatosis)とは次の如く定義される.すなわち白血骨髓肉腫症とは主として骨髓系を多發性に侵す造血組織腫瘍の一つで,周圍組織への腫瘍細胞の浸潤を起し,肉腫としての性状をあらわしている未熟型(惡性)の腫瘍で,白血病性の血液像を呈するものといい得るのである.以上の事は次に述べる觀察例及び剖檢所見に依り一層明らかになる事と思う.
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