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早産は児の生命予後の不良化ならびに脳性麻痺などの神経学的後遺症を引き起こし,産科臨床においていまだ完全に防止することのできないきわめて重要な疾患である.切迫早産は子宮収縮に伴う子宮頸管の短縮開大ならびに頸管熟化現象を主体としており,その機序解明から防止法の検討がなされてきた.
子宮収縮抑制による早産の防止という考えであるが,北米においては現状ではその効果は一時的と考えられ,むしろ分娩後の児の予後改善を目的としたステロイド投与を重視し,その有効性が生じる48時間の短期陣痛抑制療法が基本的な考え方である.これは子宮収縮抑制剤に関し妊娠維持期間の延長について偽薬と比較して有意差がないとする北米から発表された前方視的比較試験論文1, 2)に基づいている.ただ,北米では切迫早産を規則的な子宮収縮を呈し,かつ経時的に子宮頸管開大が進行するものとの定義3)に基づいた臨床研究,すなわち満期前に陣痛(preterm labour)発来した患者を対象することを原則としている.経腟超音波診断による頸管長の評価や,がん胎児性フィブロネクチン測定による早産の危険度の評価,そして切迫早産発症時の硫酸マグネシウムや塩酸リトドリンの投与は限られた役割でしかない.一方,日本では頸管の変化を伴わなくても自覚される規則的収縮がある場合,または子宮収縮は不規則であっても内子宮口の楔状開大,または頸管長が超音波診断にて25 mm以下に短縮している場合を切迫早産(threatened preterm labour)と定義し,早期からの子宮収縮抑制を行う予防的長期子宮収縮抑制療法が基本となっている.その他,自然早産の発症機序の中心が炎症であることから,抗炎症に注目した独自の治療戦略を導入していることも日本での自然早産率が他国と比較して低い理由となっている可能性がある.ただ残念ながら前方視的無作為比較試験が日本に十分ないことや,定義の違いから北米での結果と単純に比較することはできない.
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