今月の臨床 不妊診療のABC─ARTの前にできること
不妊原因診断とARTの前の対処法
2.多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
柴田 健雄
1
,
富澤 英樹
1
,
牧野田 知
1
1金沢医科大学医学部産科婦人科
pp.1114-1120
発行日 2011年9月10日
Published Date 2011/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102776
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多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は,1935年のSteinとLeventhalによる無月経,両側卵巣にみられる多嚢胞,黄体の欠如もしくは極端な発育不全,多毛を主徴とする7症例の歴史的な報告1)をはじめとし,多くの研究者によって報告されてきた排卵障害を呈する症候群である.研究者による若干の概念の違い,人種による病態像の違いなどがあるが,世界的にみても性成熟期の15女性に1人は本症候群に罹患している2)といわれ,不妊診療の現場では大きな比重を占める疾患である.昨今普及している生殖補助技術(assisted reproductive technology : ART)の立場からみれば,排卵障害に関しては経腟超音波下での採卵(oocyte pick up)によって容易に解決すると思われがちであるが,PCOSにおけるARTでは卵巣過剰刺激症候群(ovarian hyperstimulation syndrome : OHSS)の発症が有意に多く,原因に応じた非侵襲的な方法で治療ができるならばそのほうが望ましいことはいうまでもない.PCOSの病因としては,(1)高アンドロゲン血症,(2)卵胞発育の異常,(3)ゴナドトロピン異常,(4)インスリン抵抗性などが指摘されている2).以下,これらの病態について簡潔に述べ,わが国におけるPCOS不妊患者に対する治療を中心に記述する.
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