今月の臨床 体外受精マニュアル—新しく始める人へのアドバイス
体外受精の合併症とその対策
4.多嚢胞性卵巣症候群の過排卵刺激
藤原 敏博
1
,
堤 治
1
,
武谷 雄二
1
1東京大学医学部産婦人科
pp.1103-1106
発行日 1995年8月10日
Published Date 1995/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902232
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●はじめに
多嚢胞性卵巣症候群(以下PCO)は,不妊症の原因として頻度の高い疾患であり,月経異常をもつ婦人においては,無月経症例の約3分の1,稀発月経症例の約90%が本疾患に起因するといわれる,本疾患をもつ不妊症症例に対しては,排卵誘発療法が適応となるが,その80%程度はクロミフェンに反応を示し,残りがHMG療法あるいは体外受精・胚移植(IVF-ET)を必要とする1,2).ちなみにクロミフェン療法を行った症例における妊娠率は35〜50%であり,また治療周期当たりの妊娠率は卵巣機能が正常な女性にほぼ匹敵するといわれる.一方,HMG療法を行った症例では排卵率は95%を越え,妊娠率は60〜70%であるとされる2).しかし多胎率および流産率が高く,また卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まるという欠点を有する.
PCO症例がIVF-ETの適応となるのは,以下のケースが考えられる.
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