今月の臨床 婦人科内分泌療法─病態の理解と正しい診断に基づく対処・治療のポイント
月経異常
3.多嚢胞性卵巣症候群
久慈 直昭
1
,
小川 誠司
1
,
井上 治
1
,
福永 朝子
1
,
菅原 かな
1
,
山田 満稔
1
,
浜谷 敏生
1
,
吉村 𣳾典
1
1慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
pp.384-389
発行日 2011年4月10日
Published Date 2011/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102621
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1 概 念
多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は,生殖年齢女性の5~8%に認められ,本テーマである月経異常・不妊症の主要な原因を占めている1).本疾患は1935年にSteinとLeventhalが両側卵巣の多嚢胞状腫大・無月経・不妊の症例を初めて報告2)して以来,その疾患概念は排卵障害や男性化を中心としたものから,内分泌異常やインスリン抵抗性に起因する子宮体癌や心血管系疾患の罹患率上昇を含むようになり,大きく変化してきた.この変化に対応した新しい診断基準がESHRE/ASRAM(2003),日本産婦人科学会(2007)からそれぞれ発表されている.しかし,PCOSは一元的な病因論ではいまだ説明できるまでには至っておらず,今後さらなる分子レベルでの解明が期待されている.本稿ではこれまでの疾患概念および診断基準の変遷とともに,PCOSの治療,本疾患にもとづく不妊への対応などについて概説する.
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