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1 はじめに
多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は,1935年にSteinとLeventhalによる両側卵巣が多嚢胞状に腫大し,無月経(月経異常),多毛,肥満と不妊を呈した7例の報告例に始まる1).現在に至っても,欧米のPCOSの病態はいまだに完全に解明されていない.以前からは視床下部-下垂体-卵巣系,副腎系などの機能異常に起因する内分泌的悪循環であるといわれてきた.しかしながら最近ではインスリン抵抗性との関連が注目されており,PCOSを全身性の代謝異常ととらえる風潮が強まっている.本邦のPCOSの臨床症状は月経異常(92.1%),不妊(98.7%),男性化(23.2%)(多毛,にきびなど),肥満(20.2%)であり,無排卵による不妊により不妊治療の門戸をたたく患者も多い.原因や病態が完全に解明されていないことから,治療に難儀する疾患の1つである.
欧米では以前より高アンドロゲン血症が重視されていたが,現在では月経異常や高アンドロゲン血症,卵巣の嚢胞化の3つの項目のうち,2つの症状があればPCOSとする診断基準に改変されている.一方,日本では高アンドロゲン血症を呈するPCOSは少なく,日本産婦人科学会の1993年に提唱された診断基準では高LH血症のみを取り入れていたが(表1),2007年の改訂では表2に示すように男性ホルモン値も診断基準に組み込まれた.
したがって,わが国のPCOSはすべて従来の基準を満たすことになるものの,欧米のPCOSは必ずしもわが国の患者集団と一致しないため,今後も欧米の報告を鵜呑みにすることはできない状況が続くものと思われる.
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