今月の臨床 絨毛と胎盤をめぐる新知見
絨毛研究最前線
1.胞状奇胎の発生機構
兼城 英輔
1
,
和氣 徳夫
1
1九州大学病院産科婦人科
pp.237-241
発行日 2011年3月10日
Published Date 2011/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102591
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はじめに
胞状奇胎は胎盤のもとになる絨毛組織が正常に発育せず,絨毛が嚢胞化する異常妊娠で,全胞状奇胎(全奇胎)および部分胞状奇胎(部分奇胎)に大別される.東アジア地域では欧米に比して胞状奇胎の発生頻度が高く,わが国では1,000妊娠当たり1.2~2.0の発生頻度と報告されている.
胞状奇胎のうち全胞状奇胎は10%が侵入奇胎を,2~3%が絨毛癌を続発することが知られており,奇胎娩出後も厳重な経過観察が必要である.一方,部分奇胎からの侵入奇胎の続発率は1%と報告されている.現行の絨毛性疾患取扱い規約1)においては,短径2 mmを超える嚢胞化絨毛を肉眼的に認めることが胞状奇胎の診断基準であり,組織学的検査の併用による診断の確認が推奨されている.さらにほぼすべての絨毛が肉眼的に嚢胞化しているものが全胞状奇胎,一部の絨毛が嚢胞化しているもの,または胎芽,胎児,臍帯を認めるものは部分胞状奇胎と診断されている.
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