産婦人科医療--明日への展開 病態生理の新しい理解
Ⅰ.婦人科篇
胞状奇胎の雄性発生とその悪性化機構への考え
関 敏雄
1
,
藤田 博正
1
,
大久保 仁
1
,
酒井 慶一郎
1
,
林 宏
1
,
椎名 美博
1
,
和気 徳夫
1
,
一戸 喜兵衛
1
Toshio Seki
1
1北海道大学医学部産婦人科教室
pp.775-778
発行日 1983年11月10日
Published Date 1983/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206893
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全胞状奇胎(奇胎)は,全ての絨毛の水腫嚢胞化と胎児の欠如を特徴とし,組織学的にトロホブラストの過形成,絨毛間質の浮腫および血管無形成,胎児由来組織の欠如を示す疾患であるが,臨床上奇胎娩出後約10%の患者に続発変化をきたし,破壊性奇胎や絨毛癌などの悪性変化例が認められる。このため奇胎は癌化しやすい素地をもつ疾患としてその本態に興味がもたれ研究が積み重ねられてきている。1970年染色体分染法の開発に端を発した細胞遺伝学の急速な進展に伴い,その応用が奇胎細胞におよび,奇胎発生機構の解明が急速に展開された。本稿では細胞遺伝学から解明された「奇胎は父親のゲノムのみを継承し発生の進行する」という雄性(核)発生(androgenesis)機構の解析の経偉と,続発変化には二精子受精により発生した奇胎が関与しているのではないかという最近の知見について述べることとする。
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