今月の臨床 生殖医療のトピックス
胚の質評価法の進歩
齊藤 英和
1
,
齊藤 隆和
1
,
久須美 真紀
1
,
伊藤 めぐむ
1
,
堀川 隆
1
,
宮田 あかね
1
,
高橋 祐司
1
1国立成育医療センター周産期診療部・不妊診療科
pp.1402-1409
発行日 2009年11月10日
Published Date 2009/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102214
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はじめに
胚の質はそれ以前の卵子の質や精子の質の影響を受けさらに,体外受精,たぶん体内でも胚の発育環境にも影響を受けると考えられる.また,胚の質はその後の妊娠の有無に影響を及ぼす重要な因子であり,胚の質を評価することは,臨床においてはとても重要な検査となる.それゆえ,胚の質は卵・精子・胚が接するすべての環境因子の総合結果としての指標となる.
一方,体外受精などの技術の向上に伴い,多胎妊娠が高率に認められるようになった.以前移植胚数を3個までに制限する会告を出し,ある程度の効果を認めたが,最近のさらなる生殖補助医療の進歩により,多胎妊娠を防ぐためには,移植胚数を1個とする必要性がでてきた.そこで,日本産科婦人科学会は平成20年4月,「生殖補助医療における多胎妊娠防止に関する見解」を会告として掲載した(図1).臨床的には,妊娠率を低下させずに多胎妊娠を減らすことが重要であり,このために,妊孕能を評価し,この値の高い胚を選択し移植することが重要となる.臨床に応用できる胚の評価法には,卵子・胚,精子の因子を考慮しなければならないが,今回は精子については省略し,卵子・胚について考察する.これらの評価法を分類すると,(1)卵胞環境の評価,(2)卵,胚の形態学的評価,(3)胚発育速度からみた評価,(4)胚を培養した培養液中の物質の消費量や胚から生産され培養液中に分泌される物質量の評価などがある.これらの評価法について解説する.
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