今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
II 不妊の治療 D生殖補助医療(ART)
【胚凍結】
83.胚盤胞凍結の際にAH(透明帯補助孵化法)を行う方法があると聞きました.その有用性について教えてください.
向田 哲規
1
1広島HARTクリニック
pp.588-590
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102072
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
凍結胚移植は,融解後生存した胚を,自然排卵周期か外因性のエストロゲン・プロゲステロン剤投与による子宮内膜作成周期で移植することにより,採卵周期のような卵巣過刺激による子宮内膜とは違った環境下に移植できるという利点がある.そして,胚盤胞に達した胚のみ低温保存し,融解後生存した胚を移植できる融解胚盤胞移植法は,胚の質的診断がより正確となるため,従来の分割胚の凍結融解胚移植の妊娠率よりよい結果となっている.しかしながら,凍結融解という人工的手技に起因する融解胚移植の着床不全の原因の1つである透明帯の硬化による孵化不全が影響する可能性がある.
一般的に透明帯は,媒精,人工的な培養環境によって変化を起こし,硬化する可能性があると報告されており,特に凍結融解過程は,耐凍剤への曝露,冷却(脱水)過程,LN2への曝露,LN2内での長期保存,加温(加水)過程などによって,さらに透明帯が硬化することが知られており,初期分割胚を融解後胚移植する際にAHを施行することで有意な着床率の向上が報告されている1).このため,ガラス化胚盤胞融解移植法においても,同様な機序により透明帯の硬化を生じ,孵化(hatching)が妨げられる可能性がある.
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.