今月の臨床 ART最新情報—妊娠率向上のために
凍結・胚移植・着床
2.胚盤胞移植
宇津宮 隆史
1,2
1セント・ルカ産婦人科
2セント・ルカ生殖医療研究所
pp.1399-1404
発行日 2000年12月10日
Published Date 2000/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904206
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はじめに
生殖補助医療の領域において,1990年代初頭の精子卵細胞質内注入intracytoplasmic sperminjection(ICSI)の実用化は,特に男性因子不妊症の治療にとって革命的な進歩をもたらした.その後co-cultureやassisted hatchingなどの新しい方法が試みられたが,それらの結果も期待されたほどではなく,これといった目新しい技術の展開は見られなかった.その中でこの2〜3年,胚盤胞期まで胚を育て,移植するという方法が新たな培養液,いわゆるsequential mediaの考案によって可能になった.そしてその結果,従来の妊娠率20〜30%と比べて60〜90%という格段に良い成績も報告されている.
その理論的根拠は 1)従来のIVF-ETでは採卵後〈排卵後〉2〜3日目に子宮に移植する.これは自然の妊娠では排卵後5〜7日目のいわゆるimplantation windowの開いている時期に胚盤胞期まで成長した胚が子宮に到達するのに比べ,2〜3日早いことになり,それが受精・分割率は70〜80%と高いにもかかわらず,妊娠率は20〜30%に低下する理由の一つと思われる.
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