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[1]はじめに
良好胚を移植しても着床しない原因の1つとして,胚のハッチング(孵化)障害が考えられている.卵管内で受精した卵子は,分割を繰り返して胚盤胞となり子宮に到達する.透明帯は胚の発育増大に伴い,内部の静水圧上昇や融解酵素などにより伸展菲薄化され,胚盤胞の収縮,拡張運動の活発化により透明帯に亀裂が生じてハッチングする.一方,透明帯は加齢とともに変性し,透明帯の硬化(zona hardening)などの質的変化が起こるといわれている1).生殖補助技術(assisted reproductive technology:ART)により得られた胚では,加齢と同様な変化が透明帯に起こり,ハッチング障害の原因となっていることが示唆されている2).孵化促進法(assisted hatching)とは,このように変化した胚の透明帯を切開あるいは菲薄するなどの処置を施してハッチングを補助し,移植胚の着床率改善を目的とする技術である.孵化促進法は従来,機械的方法および化学的方法により行われてきた.機械的方法ではマイクロガラスピペットや金属メスにより透明帯が切開(zona dissection)2)され,化学的方法では酸性タイロード(acid Tyrode)などの強酸性薬剤あるいはプロナーゼ(pronase)などの酵素薬剤により透明帯を開孔(zona opening)3),菲薄(zona thinning)4, 5)あるいは溶解(zona removal, free)6)される.しかしながら,機械的方法および化学的方法では個々の透明帯性状の相違やエンブリオロジストによる技術差などから均一に処理することは困難であり,マニピュレーターのセッティングや操作の煩雑さあるいは薬剤による胚への影響などの問題点も多い.最近,これらが解決される半導体レーザー(1.48μm diode laser)を使用したレーザー法(laser assisted hatching:LAH)が普及してきた.本稿では,LAHを紹介し,孵化促進法の有効性について述べる.
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