今月の臨床 ここが聞きたい―不妊・不育症診療ベストプラクティス
II 不妊の治療 D生殖補助医療(ART)
【体外受精および培養】
74.卵子は採取されるものの,胚盤胞まで到達するものがありません.次回はどのように対処すべきか教えてください.
吉田 英宗
1
1吉田レディースクリニック
pp.567-569
発行日 2009年4月10日
Published Date 2009/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102063
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[1]はじめに
臨床上,数回ARTを施行しても良好胚盤胞がまったく得られない症例にもたびたび遭遇する.
胚の発生過程では,受精後,通常11~18時間後に前核が確認できるようになり,第1卵割周期は約30時間持続する.卵割が順調であれば受精後2日で2~4細胞,3日で8細胞期となる.Compactionは8細胞期以降に起き,拡張期胚盤胞は5日目以降で認められる.通常ヒトでは受精卵の胚盤胞到達率は約50%であり,その発生停止の原因は胚の染色体異常,または卵子形成過程の異常による卵子発生能低下などであると考えられている.連続して胚盤胞に到達しない症例には,高齢者,低反応者,子宮内膜症患者,多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome:PCOS)症例に多くみられるが,若年の原因不明症例も存在する.おのおのの症例において,低下した卵子発生能を回復させること,現在リザーブしている卵そのものの質を改善することは困難であり,治療も非常に困難をきわめる.臨床の場でできることは,患者が現在保有している卵子の状態をいかに低下させずに,卵子発育をはかれるかという一点であろう.画一的治療法では困難と思われるが,高齢者および低反応者,子宮内膜症症例,PCOS症例についての当院の排卵誘発法について述べる.
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