今月の臨床 不妊治療と多胎妊娠
ARTと多胎妊娠
3.単一胚盤胞移植の利点と問題点
蔵本 武志
1
,
江頭 昭義
1
,
大塚 未砂子
1
,
吉岡 尚美
1
1医療法人蔵本ウイメンズクリニック
pp.302-307
発行日 2008年3月10日
Published Date 2008/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409101694
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多胎妊娠予防の重要性と単一胚盤胞移植
多胎妊娠は,卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と並んでARTの安全性を脅かす重要な生殖医療の副作用である.日本における多胎出生率は,特に1990年代初めに体外受精が本格化するとともにますます急増している.双胎を含めた多胎妊娠は,早産や妊娠高血圧症候群などの周産期異常を起こしやすく,単胎妊娠と比較して,双胎児では脳性麻痺の割合が10倍増加し,死亡率も3倍高いことが報告されている1).また,多胎妊娠では低出生体重児(2,500 g未満)の割合が増加し,単胎児と比較して9倍近く高いことが報告されている2).さらに,低出生体重児であるためNICUへの入院率のリスクなども増加する3).
これにより,分娩に要する費用も増加し,単胎妊娠と比較して双胎妊娠では3.9倍,三胎以上の多胎妊娠では11.1倍も必要であり,1年間に母子にかかる医療費も24~44倍も増加すると海外では報告されている4).医療費が増加するために,不妊に悩む夫婦のQOL(quality of life)が低下することが懸念されている.わが国は,産科医の不足と周産期管理を担う医療施設の減少が大きな問題となってきており,NICUを併設した施設も絶対的に不足している.現状から判断して,周産期リスクの高い多胎妊娠を回避することは重要な問題である.
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