- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
厳しいグローバル化競争に晒されている一般企業では,人事給与体系の改革が急ピッチで進められている.年功序列の対極として当初はもてはやされた成果主義の弊害も踏まえて,優良企業の多くは決め細やかな職種別の考課システムを構築している.そして経済・構造改革の流れから距離をおいていた医療界においても,一般病院はもとより大学病院でも,組織の存続のためには人事給与体制の抜本的な改革が必要となってきた.その基本となるのは評価(考課)であるが,すでに大学病院でも医師(教育職)に関しては,教育・研究・診療という3領域についての自己評価と第3者評価が実施されている.一方,多数を占める一般職については,チームとしての仕事を基本とすることからも,体系だった個人考課については一部の職種を除きほとんど考慮されていなかった.病院の一般職員の昇進は経験年数や上司の情意によるところが大きく,組織内での競争はチーム医療を乱すものとしてむしろ弊害と捉える意識があった.しかし医師はもとより看護師,薬剤師,医療技術職(臨床検査技師,放射線技師など),そして事務職についても,横ならびの年功序列を廃した考課・給与制度がなければ,自己研鑽の意欲は低下し,組織の活性化や発展は望めないことは明らかである.人口減少・高齢化社会になることで,今後の医療保健制度の変革は必至であり,すでに4~5年前から総医療費の抑制政策もとられてきた.一般病院の経営は非常に厳しくなってきており,すでに一部の病院では企業のノウハウを取り入れて職員の考課制度を導入し,抜本的な給与制度改革を進めようとしている.今後は医育機関である大学病院であっても,全職種において各職域別の考課表と公正な判定基準を作成し,個人評価を反映する給与体系を作ることで意識改革と人材育成を進めて,医療資源の効率的な運用をはからなければならない.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.