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初期研修医および後期研修(専門研修)医の大学病院離れがますます顕著になってきています.新研修制度が発足する前の平成14年の統計をみると,全国平均では71.4%が大学附属病院で研修(各科入局)しており,あまり大きな地域差はありませんでした(最高は北海道の76.4%,最低は東北の63%).大学病院での初期研修医の減少はこの制度開始の当初から予測されていましたが,それでも2年後には専門研修開始のため帰学するものもかなりあるのではという期待もありました.しかし現実には,初年度(18年度)の帰学率は平均50.4%で,今年はさらに低下して47%となっています.帰学率には非常に大きな地域差があります.唯一関東は14年の71.4%から19年では75%と逆に帰学率が増加していますが,そのほかはすべて大きく減少しました.特に東北,四国は23~25%,北海道,中国は28~30%で,そのほかの地区でも50%以上のところはありません.また帰学しない医師の多くは大都市の病院に集中する傾向がありますので,医師の関東,特に東京への一極集中が急速に進んでいることは明白で,現在医師不足とされている地域では今後ますます状況が悪化するでしょう.
研修病院のマッチング参加者へのアンケートをみると,研修先を決める優勢項目順位は,1)実績・指導体制,2)プログラム内容,3)将来進みたい大学,関連病院,4)実家に近い,5)給与・勤務条件,6)都市部に近い,などとなっています.また一般病院と大学病院それぞれの研修医への「研修体制などに満足していない理由は?」というアンケートから大学病院の問題点をみると,「待遇・処遇が悪い」「雑用が多い」「コ・メディカルとの連携がうまくいかない」「研修に必要な症例・手技が十分経験できない」「研修に対する診療科間の連携が悪い」などが挙げられています.これらからも初期研修において大学病院が抱える構造的な問題点が示されていますが,同時に医学知識・技術を自ら学ぶという姿勢より,できるだけ効率的に教えてもらいたいという受身的思考が感じられます.現在はなお卒後研修・教育の過渡期であるとはいえ,各領域での専門医あるいは指導医資格の取得をあたかも医師としての最終目標と考えているような若い医師の動向や,大学院での医学研究希望者の激減などからは,医師としての自覚や将来像が大きく変わってきていることが窺えます.
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