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1 はじめに
産褥期間は,日本産科婦人科学会編集による『産科婦人科用語集・用語解説集』1)(以下,日産婦用語集と略)では分娩が終了してから妊娠・分娩に伴う母体の生理的変化が非妊時の状態に復するまでの期間をいい,本邦では通常6~8週間とされている.国際的な産褥期間の定義はないが,第10回国際疾病分類(ICD─10)では,妊産婦死亡を妊娠中または分娩後42日以内における死亡と定義しているため,国際統計上では42日間ということになると思われる1).また,日産婦用語集では分娩24時間以内の異常出血を産褥早期出血,分娩24時間以後の産褥期の異常出血を産褥晩期出血と定義している.Leeら2)は,3,822例の分娩例において分娩後3週間以内の異常出血(薬物投与,外科的処置を要したもの)を示したのは58例(1.5%)であり,腟壁,頸管裂傷であった2例を除いた56例の時間的な内訳は,分娩後4時間未満の出血が5例(8.9%)(5/56例),4時間以上~24時間未満が24例(42.9%)(24/56例),24時間以上~4日未満が18例(32.1%)(18/56例),4日以上~7日未満が2例(3.6%)(2/56例),7日以上が7例(12.5%)(7/56例)であったと報告している.
産褥期間の子宮(以下,産褥子宮と略)の超音波診断についての報告はあまり多くはない.産褥期に超音波を施行する理由としては,大量出血例や長期出血持続例に対する原因検索,胎盤遺残,絨毛性疾患,子宮筋腫,卵巣腫瘍などの診断や経過観察,帝王切開術後の子宮創部の観察などが挙げられる.特に,胎盤遺残の診断がなされれば不用意な処置による大量出血の危険性を回避できる可能性や,将来の出血に対しての対策を検討することができる.また卵膜,脱落膜遺残のみのケースでは経過観察のみでも自然排出が期待できる場合もあり3, 4),不要な処置を避け得る可能性もある.欧米では胎盤遺残の頻度は3.9~9%との報告5~9)があり,現在,保健適用はないものの産褥子宮の超音波診断の臨床的意義は大きいものと考えられるため,今回は産褥子宮の超音波所見,主に胎盤遺残を中心に検討してみたい.
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