シンポジウム 乳幼児先天股脱の手術療法
先天股脱における減捻骨切り術
泉田 重雄
1
Shigeo IZUMIDA
1
1慶応義熟大学医学部整形外科学数室
pp.148-153
発行日 1973年2月25日
Published Date 1973/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904804
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先天股脱における大腿骨頸部前捻に関しては古くから多数の論議のあるところではあるが,頸部前捻の実態,生力学的意義の把握においては相異つた見解,意見が錯綜しており,理論的根拠に確実なものが少く,たとえば『何度以上の頸部前捻に対して,何度の頸部減捻を行うべきか』といつた.最も基本的であり,また具体的な疑問に対して人々を首肯させ得る解答を得難い現況といつてよい.
試みにCampbellのOperative Orthopaedicsを繙いてみると減捻骨切り術に関して1976頁から約3頁にわたる記載をみるが,その中には簡単な導入,二三の歴史的条項につづいて『実際的な見地からいえば,大腿が中間位または軽度の外旋位において,股関節の亜脱臼や脱臼をおこす程に頸部前捻が高度であるならば,その前捻は矯正されなければならない…….骨切りの高位や,骨片の固定法などはほとんど問題でない……』と,はなはだ素気ない論述の後にPlatouの転子下骨切り,とCregoの髁上骨切りの記述をみるに過ぎない.先天異常に関するCampbellの記載は他の部分に比較して簡略であるが,高名な手術書の記述としてはなはだ物足りない,とはいえ他の多くの成書の記述も,大同小異であつて,頸部前捻を単に大腿骨上端部の形態異常として把握する限り,楯の一面を論ずるに過ぎないのである.以下頸部前捻の実態,意義およびこれに対処すべき方途について自家見解を述べる.
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