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大腿骨減捻内反骨切り術は先天性股関節脱臼(以下先天股脱と略す)のうち,大腿骨近位部の前捻過大ならびに外反股が原因で遺残亜脱臼となった症例あるいは観血整復時同様の理由で整復位保持が困難な症例に対して,求心性不良を改善させるために適用される補正手術で,1954年Bernbeckによって報告されたのを嚆矢とする.それ以前から大腿骨頸部の前捻過大は臼蓋形成不全の構成要素の一つと考えられ,大腿骨減捻骨切り術は施行されていた.しかし,先天股脱の大腿骨頸部は前捻過大のみでなく,外反股を伴っていることが多いこと,さらに,観血整復の際には股関節を外転内旋位すなわちLangeの肢位で大腿骨頭は求心性良好な位置を保持できることから,Bernbeckは寛骨臼と大腿骨頭との適合性が良好となる股関節外転内旋位に保持し,手術的に下肢を平行伸展位に矯正するという考えのもとに大腿骨転子間部での減捻内反骨切り術が開発された(図1).以来,本法は幾多の人々によって追試され,その手技にも多少変更が加えられながら手術侵襲が骨盤側に比べて少ないこと,求心性改善によって臼蓋形成も促進が期待されるとの考えから,一時盛んに施行された時期があったが,追跡調査で再外反股がかなり生ずること(図2),多少の前捻過大や外反股は歩行動作などによって自然矯正が期待されること(図3),さらにSalterあるいはPemberton骨盤骨切り術が出現,普及するに及んで,本術式は寛骨臼の補正にとどまらず,ある程度の前捻過大や外反股による求心性不良はcoverできることなどの理由で求心性不良,臼蓋形成不全ならびに大腿骨前捻過大・外反股が合併する遺残亜脱臼に対しては,先ず前述の方法で臼蓋補正を優先するものが多く,現今では本法の適応となる症例はかなり限定されている.
以下,本術式の適応や手術手技を順次述べるが,この手術の意義を理解するには健常児大腿骨近位部の形態について理解しておく必要がある.
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