視座
先天股脱の今昔
青池 勇雄
1
1東京医科歯科大学医学部整形外科
pp.95
発行日 1968年2月25日
Published Date 1968/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903870
- 有料閲覧
- 文献概要
昔といつても,それほど遠い昔のことでなく,私が入局した約30年前のこと,その当時すでに早期診断,早期治療の重要性が言われだしたとはいえ,まだ一般にはあまり認識されていなかった頃である.その頃の先天股脱はほとんど歩き方が変だということで病院を訪ねてきたもので,したがつて患者は2〜3歳以上のものが随分多くあつた.たまたま注意深い母親が乳児の脚の外旋位とか,股関節部の音などの異常を気付いたり,あるいは上の子供に股臼があつたということで乳児を検診に連れてくることなどあるにはあつた.そんなわけで昔は先天股脱では,あらゆる程度のものをたくさん観察することができた.
昨今は年長児の脱臼に接することは幸い非常に減つている.その代り,成人のHypoplasiaによる二次的変形性関節症のCaseが目立つている.これは絶対数が増しているというのでなくて,Osteotomyなどを治療する機会が多くなつたことを意昧するものと思う.
Copyright © 1968, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.