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あとがき
清水 克時
pp.832
発行日 2000年6月25日
Published Date 2000/6/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408903030
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今月号の視座では,群馬大学・高岸憲二教授が医師と患者のより良い関係について持論を展開しておられます.医学の知識が増え,ちまたにあふれたことが医師と患者の関係を従来と全く違ったかたちにしているようです.これは,ひとり医療,医学に限ったことではありません.
最近新しく文庫本になった梅棹忠夫氏の「情報の文明学」(中公文庫)を読みました.あらゆる社会で情報が過剰供給になると,これまでの歴史にはなかった新しい時代が生まれてくることが,すでに1963年に予見されています.人類の産業の歴史を三つに要約し,農業の時代,工業の時代,そして第三段階が精神産業あるいは情報産業の時代です.第三段階では,たとえば食事についても腹が減ったから食事をするという段階ではもはやなく,「なにか食べたい」というのは,食欲を満足させるだけの欲求からすすんで,味覚という感覚の充足をも欲しいという時代がくることだそうです.アルビン・トフラーが1980年に「第三の波」で述べたのもこれと同じような考えです.
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